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世界の洋上発電設備をコンクリートAMで革新する!日本初出展「RCAM Technologies社」のビジョンと技術とは?

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2024年4月10~12日に東京ビッグサイトで開催された日本最大の国際海事展示会「Sea Japan 2024」(主催:インフォーマ マーケッツ ジャパン株式会社)に、今回日本に初めて出展した「RCAM Technologies社(以下RCAM社)」に個別インタビューする機会をいただいた。日本含め、世界の洋上発電設備をコンクリートAMで革新することを目指す同社のビジョンと技術は日本企業との連携も含め、コンクリートAM活用に一石を投じる可能性を感じさせるものであった。(写真:RCAM社プロダクトマネージャー Mason Bell 氏)

RCAM社の概要とビジョン

今回のインタビューは、長年AMを活用されると共に国内外のAMに関するニュースを自社ウエブサイト「id.arts」を通し独自の視点から発信され続けている、アイディーアーツ株式会社 代表取締役 米谷芳彦様からのご招待により共同インタビューとして実現したものであり、この場を借りて感謝の意をお伝えしたい。

インタビューに応じていただいたのは、RCAM社のプロダクトマネージャー Mason Bell 氏で、うかがったところ大学で土木工学を学び、インターンシップからそのまま入社したとのことで、このビジネスへの期待と熱意が伝わってくる好人物であった。

RCAM社はアメリカ コロラド州 ボールダーに本社置く2017年設立のスタートアップ企業で、ロサンゼルスとニューヨークに製造施設があり、次のような現状の課題に対し解決するビジネスビジョンと計画を掲げている。

洋上風力発電設備の課題

アメリカではグリーンエネルギー需要の増加に伴い、洋上風力発電設備の大規模化、風車タワーをより高くする需要が高まる一方、建設が難しく、鉄鋼部材を使う場合は原料調達、製造できる場所からの大型部材の輸送が必要などの課題が生じていた。

解決するRCAM社のビジネスビジョンと計画

洋上風力発電設備を現地港湾で建設するビジョンを示したブースパネル
洋上風力発電設備を現地港湾で建設するビジョンを示したブースパネル

世界的にもトップクラスの大型コンクリート3Dプリンターを購入し、それを使って求められる複雑な形状の部品を自社開発し、大型洋上風力・波力・太陽光発電設備に必要なアンカーなどの部品を建設設置現場に近い港などで個別ニーズに応じてカスタムメイドで、かつ現地入手の材料を使い、低コストで輸送、排出CO₂、廃棄物を減らせるサステナブルな総合製造ソリューションを提供するビジネスをアメリカで立ち上げながら、世界各地に現地顧客やパートナーと協働して3Dプリンター製造設備を設置し、地産地消製造の実現を目指していく。

今回、日本の展示会に初めて出展した目的は、日本の状況を知り、業界の人々と情報や意見を交換して可能性を探り、 再生可能エネルギー分野における日米協力を目指すために日本での販売先と協働パートナーを探すこととのことであった。

会社設立から現在まで

RCAM社CEOであるJason Cotrell 氏はアメリカ国立再生可能エネルギー研究所(NREL)で機械技師として長年風力発電機の研究をされ、大型部品の製造に当時普及初期のコンクリート3Dプリンターを使うアイデアを思い付く。その研究開発と社会実装をより自由に行うべく、2017年にRCAM社を設立し、2023年まで3名だった社員は現在8名に増え、急成長している。これまで受けた出資はすべて連邦政府や州の機関からのもので、民間からの出資は受けていない。2017年ごろ最初の開発プロジェクトとしてカリフォルニア エナジー コミッション(CEC)との研究で、コンクリート3Dプリンターは鉄鋼製よりコストパフォーマンスや低CO₂排出の点で有効なことがわかり、2019年にアメリカで洋上風力発電の機運が高まったことで開発の引き合いが増え、15メガワット洋上風力タービンの3本足海底土台をロボット式のコンクリート3Dプリンターで作ることに成功し、鉄鋼より地元の材料とサプライチェーンが使える点で注目を集めた。

洋上風車の縮小3Dプリント模型
洋上風車の縮小3Dプリント模型

洋上風力発電の土台に需要があることは見えたが、まずは小さい部品から始め、徐々に大きな基礎部品に挑戦していく計画を立て、2024年は特許取得済みの「重力アンカー」の開発に取り組む。これは浮体式洋上発電機を海底に固定する錨の役目をするもので、容器のようなシェル状の枠だけをコンクリート3Dプリンターで作り、中には安い岩や汎用セメントなどの重りを詰める作り方で、これによりコンクリートだけで作るより材料を60%削減でき、かつ設計ソフトウエアのパラメータ変更で多様な形状ニーズにも対応できる。またシェルの中に網目状の形状物を積層すれば、人口漁礁・サンゴ礁にもなる。

重力アンカー シェル+セメントの縮小コンクリート3Dプリント模型
重力アンカー シェル+セメントの縮小コンクリート3Dプリント模型
重力アンカー シェルの縮小3Dプリント模型
重力アンカー シェルの縮小3Dプリント模型

RCAM社はロサンゼルス港の倉庫建物内に世界初の港湾で製造できる3Dプリント工場を作り、今年2月にはニューヨーク州に2番目の工場を取得し、14×14m、高さ10mのガントリープリンターを導入した。これは高さ5mごとのモジュール式で、現在は天井の高さ制限があるが、建物の外の港湾屋外に移設すれば、世界最高の高さ24mのコンクリート3Dプリンターとなる。施設には延べ1,300名以上の政治家、教員学生、業界関係者のほか、元カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガー 氏など著名人の見学者を受け入れ、周知と認識醸成に努めている。アームロボット式やガントリー3Dプリンターおよびセメント材料は、オランダの既存メーカーと提携し、共同開発を行っている。

今後の展望

現在はまだ販売実績はなく、重力アンカーのパイロット製造から、自社製品として大規模基礎や海中に再生エネルギーを貯蔵するシステムへと開発を進める計画。今後は既に洋上風力発電建設の事績のある企業からニーズを聞き出し、3Dプリンターシステムを売るのではなく設計から製造までの自社のソリューションによるコラボレーションの可能性を模索していく。

既に今回の来日中に対話した日本の企業からは好感触を得ているとのこと。まだRCAM社やその技術は未知数の部分もあるが、世界共通のエネルギーやサステナビリティの課題に対し、3Dプリンティング技術を活用して大きなスケールで解決方法を考え、短期間にビジネス化すべく、国内外問わずに専門企業や顧客と連携し、研究開発実証実験を進める姿勢には日本も学ぶことは多く、今後の進展に注目していきたい。もしRCAM社との連携に興味がある、または直接話を聞いてみたい方がおられれば繋ぐこともできるので、ぜひShareLabお問い合わせページからご連絡をいただきたい。


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